変わんないけど進化中!!
THAT KIND 愛
テキスト
ライブ終演後
蕾叶あっ、心玖! どこ行ってたの?
心玖ごめんね、ちょっと外に出てたんだ。 ここ、暑かったから
蓬咲よ、よかった……帰っちゃったかと思いました〜……!
ちえりまったく、ちえり褒め称えタイムを 無断欠席するなんて、困った部下ですね!
寧月心玖がいないと、一番に気づいたのはチェリだった
ちえりふふん、当然です! 部下のことはちゃんと見てますよっ
蕾叶チェリは心玖にも褒めてもらいたかっただけだろ〜?
鈴木……蕾叶さん、皆さんも。 ライブお疲れさまでした
蕾叶あ……鈴木さん。 お疲れさまです
蕾叶私たちのライブを観て、考えは変わったでしょ?
鈴木……正直、想像よりは悪くないライブでした
ちえりふふん、そうでしょう!
鈴木でも、問題は解決していません。 それとこれとは話が別です
鈴木今日の客入り、酷いものでした。 このまま続けたって何も変わりませんよ
蕾叶変わりますよ! ファミリーも、ライブも全部!
蕾叶ファミリーが変われば、ホームも進化します!
鈴木また精神論……! こちらは目に見える根拠がほしいんですよね〜
鈴木ほんと、子どもはビジネスがわからないから困ります
蕾叶なっ……!! じゃあ満員のお客さんが入ったら 諦めてくれるってことですか〜?
鈴木まあ、集客力を示してくれるのであれば ないこともないですけど〜……そんなこと無理ですよね?
蕾叶ナメてもらっちゃ困りますよ、鈴木さ〜ん
鈴木えっ……!?
蕾叶今の私たちなら、次の週末のライブは このハコをお客さんでみっちみちにできますけど〜?
心玖蕾叶ちゃん……!
鈴木言いましたね!? じゃあやってみてください! 絶対無理なんで!
蕾叶うちのファミリーに『絶対』も『無理』もありません〜!
鈴木チケット、ソールドアウトにならなかったら 今度こそライブハウスをいただきますからね!
心玖……はぁ〜……
鈴木あ……! やっぱりあなた、前に私がスカウトした方ですよね?
心玖? そうですけど……
蕾叶鈴木さん、うちのファミリーに近寄らないでくださ〜い! しっしっ!
鈴木〜〜っ! それじゃあ来週、楽しみにしてますから!
鈴木……でも……これは使える……♪
蓬咲えっえっ!? もしかして今、来週もライブすることになってます!?
心玖うん……また、蕾叶ちゃんが決めちゃったね〜
ちえりまたちえりの許可なしに勝手なことを〜!
蕾叶でも今日のライブで思ったでしょ? 私たちならできるって!
蓬咲、ちえりそういうことを言ってるんじゃないのに……!! そういうことを言ってるんじゃありません!!
蕾叶ううっ……なんだよ、みんなして〜!
蕾叶寧月〜。寧月は来週もライブしたいよね〜? 楽しみだよね?
寧月? 決まったことなら、やろう
蕾叶ほら〜。寧月の言う通りだと思わない?
ちえりだ〜か〜ら〜……!
代理おーい、早く片付けしてよ〜。 お片付けまでがライブだぞ〜
一同……はーい
その夜
蕾叶みんな〜、お菓子持ってきたよ〜!
蕾叶今日は最高のファミリーライブ成功記念に、 ポテチとチョコと〜……せんべいもつけちゃうっ!
蓬咲す……すごい量のお菓子だ〜……!
寧月ふむ……馴染みのない菓子が多いな。 どんな味がするのだろう
ちえり呑気にお菓子パーティしてる場合ですか!!
蕾叶、蓬咲えっ
ちえり鈴木さんの問題、また拗れちゃったんですよ!
心玖ちえりちゃんの言う通りだよ〜
心玖今度はチケットを全部売らないと、本当にライブハウスが 奪われちゃうかもしれないってことだもん
寧月そうだったな。すまない。 初めて見る菓子に意識を持っていかれてしまった
心玖(猫を追いかけて地図なくしたって聞いたし このプリンセス、意外と本能的なんじゃ……)
寧月確か集客力を示す、という話だったが…… 蕾叶、何か策はあるのか?
蕾叶
一同…………
蕾叶あはは、大丈夫だって! ファミリーが進化すれば、ホームも進化する!
蕾叶来週の今頃は、もっとでっかいお祝いしてるはずだよ! 絶対そうなる!
蓬咲鈴木さんには『絶対』なんてないって言ってたのに〜……!!
蕾叶それはそれ、これはこれ!
心玖(ダメだこいつ)
心玖蕾叶ちゃん……そもそもこの問題って 大人たちで解決するべき話じゃないの?
蕾叶え?
心玖ライブハウスはお祖母さんのものなんだよね?
心玖蕾叶ちゃんの決めたことに従うって、聞こえはいいけど 責任を子どもに押し付けてるように見えるな〜って
蕾叶ばーちゃんはそんな人じゃないよ! 私のために『Nest』を残してくれたんだもん!
心玖残して、くれた?
蕾叶うん。ばーちゃんたちが旅に出る前、 『Nest』は潰れる予定だったんだ
蕾叶でも私がばーちゃんに頼み込んで、なんとか残してもらったの。 ばーちゃん、色んな人に頭下げてくれてさ
蕾叶『蕾叶の気が済むまで続けな! ばーちゃんたちは味方だ』って そう言ってくれたから
心玖(それってつまり……あんたのわがままに あたしたちが巻き込まれてるってことじゃない……!)
寧月蕾叶のお祖母様は、蕾叶がどうしたいのかを 尊重してくれたということなのだな
蕾叶うん! それがファミリーだって、ばーちゃんが……
蕾叶…………
ちえりどうしたんですか、急に黙って
蕾叶いや……ばーちゃんたちはそう言ってくれたけど みんなの気持ちはわかんないなって
心玖……!
蕾叶私たちはこれからファミリーになっていくんだもんね。 だったらみんながどう思ってるか聞かないと!
蕾叶蓬咲、今日のライブどうだった? やってみて何か変わったりした?
蓬咲えっ!? いきなり私ですか!?
蕾叶ほら、私と正反対だって言ってたでしょ? だから蓬咲の今の気持ちが知りたくて
蓬咲う〜っ……そ、そんなまっすぐ見ないでくださいっ…… 蕾叶さんが期待するようなことは何も言えません……!
蕾叶私の期待?
蓬咲『ライブをしてみたら楽しくって幸せでした! もっとここで ライブしたいです!』って言ってほしい目してます!
蕾叶ええっ!? よく見て! 私、そんな目してないよ!
蓬咲ぎゃーーっ、近すぎます!!
ちえりも〜、蓬咲! 自分の意見くらい堂々と言いなさいっ
ちえり蕾叶がどう思うか、話すまでわからないじゃないですか!
蓬咲う……それは、そうですけど〜……
蓬咲……わ、笑ったりしないでくださいね……
蕾叶うん、約束する
蓬咲今日のライブ…… ぜ……全部怖かったです!!
蓬咲私なんかがあんなに大きい音を出すのも、 袖に立つことも、すっごく怖かったです……けどっ!
蓬咲何より堂々と光を浴びてつよつよの演奏ができる皆さんが 怖かったんです!!
蓬咲私にはあんなこと、絶対できない……! どうして皆さんとこんなに違うんだろうって思って……
蓬咲袖とステージの距離が、 日本とブラジルくらい開いてるように感じたんです……
蕾叶蓬咲……それって――
ちえり蓬咲はちえりのようになりたかったんですね!!
蓬咲、蕾叶え!?
ちえりちえりはいつでも堂々と、あのどデカい楽器を叩いてる! そういう姿に憧れたんでしょう!
蕾叶そういうことだったの!?
蓬咲ぜぜ全然違います〜〜!! 私はそれが怖かったって話を……!
寧月蓬咲の感情は、 『畏敬の念』に近いものなのだろうか……?
ちえりイケイケの念!?
寧月深く尊敬するあまり恐怖も感じることだ。 皆の話を聞いていたらそんな言葉が浮かんだ
蕾叶す……すご〜〜い!! 寧月、物知りだね!
心玖寧月ちゃん、そういうことは知ってるんだ
寧月音楽家たるもの教養は必要だと、 母に多くの本を与えられたのだ
心玖(音楽と教養に全振りしたんだ、この子……)
蓬咲尊敬するから、怖い…… そういうことなのかな……
蓬咲そうだとしたら、私は皆さんと違って ダメダメのよわよわだって突きつけられただけですけど……
蕾叶そっかぁ……今の話、私には蓬咲が 前に進んでいるように感じたけどなあ
蓬咲え?
蕾叶蓬咲、前はライブ中に周りを見るなんてしなかったでしょ? 自分の楽器を弾くだけで限界だって
蕾叶でも今日はみんなのことを見られた! みんなのことや自分のことを考えることだってできた!
蕾叶それって蓬咲が前に進んだ証拠なのかなって!
蓬咲……あ……
蕾叶もしかしたら次のライブでは、袖とステージの距離が 日本とアメリカくらい近づくかもしれないよ!
蓬咲蕾叶さん……
蓬咲はっ!! そうやってまた私にライブさせようと してませんか!?
蕾叶えっ? あ、そうなるのか!
蓬咲無自覚で人をその気にさせようとして、ずるいです〜〜!
蕾叶ずるい!? これ、ずるいことなの……!?
蕾叶う〜ん……気持ちを知るって難しいな〜……!
心玖(でしょうね。 そう簡単に人は変わんない)
心玖(でも……)
蕾叶なんか頭使ったら甘いもの食べたくなってきた〜…… よしっ、お菓子開けよう!
ちえりあっ、まだ話は終わってませんよ! ちえりはライブの許可をしてませんっ
蕾叶あれ、チェリはライブやりたくないんだ〜? 満員のお客さんの前でドラム叩けるのに〜?
ちえりなっ……!!
蕾叶じゃあ私がチェリの分まで歓声もらっちゃお〜っと
ちえりさせませんっ!! 一番大きな歓声を浴びるのはこのちえりです!
蕾叶おっ、そっちがその気なら……
ちえりはいっ、勝負です!! 早速ちえり連合の会議を始めますよ!
ちえりこの勝負、スカスカのフロアじゃ意味がありません。 満員にする方法を考えますよ!
寧月わかった。私も考えよう
蓬咲結局ライブする流れになっちゃってる〜……! この空気じゃ断れないし〜……
蕾叶心玖〜、何かいいアイディアないかな?
心玖……蕾叶ちゃん、わたし今日のライブだけって言ったよ?
蕾叶いやいや心玖さ〜ん、 本当はもうちょっとやりたくなったんじゃないの〜?
心玖…………
蕾叶私だってもっと心玖と一緒にギター弾きたいしさ〜。 ねっ、お願い!
心玖……来週までだからね
蕾叶心玖、ありがと〜〜! 愛してるっ!!
心玖うわあっ!? ちょっと、離れてほしいな〜……!
蕾叶やだ!! 離さないっ!
心玖……はぁ……
翌朝
心玖んーっ……
心玖(静かで、気持ちいい朝…… こんな早くから犬の散歩をしてる人もいるし……)
心玖ん……? 寮の前にいるスーツの人……もしかして
鈴木あっ。心玖さ〜ん! おはようございますっ
心玖(下で手振ってる……いや、見なかったことにしよう)
鈴木ちょっとちょっと! 外、出てきませんか?
心玖……こんなとこにいたら、また蕾叶ちゃんに怒られますよ〜
鈴木いやいや〜、本当にすぐ終わるんで! 心玖さんにだけ耳寄りな情報ですっ
心玖…………
心玖それで、お話ってなんでしょう?
鈴木今日はあなたに、これを渡しに来たんです!
心玖これ……名刺と、アイドルプロジェクトの資料?
心玖前にも言ってくださいましたけど、 わたしアイドルに興味なくて〜……
鈴木大丈夫です! やってるうちに興味が出る人も結構多いんですよ
鈴木あなたは才能があります! きっとすぐに人気が出て、センターだって夢じゃない!
鈴木……そんな逸材を見つけた私の評価も鰻上り……むふふっ
心玖……あの〜鈴木さん、わたし……
鈴木ああ、今すぐに答えなくて結構です! ゆ〜っくり考えてください!
鈴木少しでもその気になったら、 いつでも名刺の番号にご連絡を! それじゃ!
心玖いや、あの……!
心玖はぁ……あの人、あれでうまくやれてるつもり……?
心玖ん? ……『アイドル専用のスタジオに、宿舎も完備』……
心玖(この話に乗れば、寮を出られる。 もちろん、実家に帰る必要もない)
心玖(どうせ今日から、またストレスばっかの日常が始まる。 それなら……)
心玖…………
心玖(今は、いいや)
心玖(来週まで付き合うって、言っちゃったし)