バンドストーリー

バンドストーリー

Unica via.

泡沫の箱庭

キャラクター: ドロリス / 三角 初華、モーティス / 若葉 睦、ティモリス / 八幡 海鈴、アモーリス / 祐天寺 にゃむ、オブリビオニス / 豊川 祥子

テキスト

語り部ようこそ、少女たちのステージへ

語り部これからご覧にいれますのは—— 秘密を抱えた彼女の話にございます

語り部その先に待つは祝福か、破滅か。 幕の降りるその時まで、人形たちの歌劇を共に見届けましょう

ドロリス……

オブリビオニスドロリス……さあ、目覚めの夜よ

アモーリスアタシが起こしてあげようか?

ティモリス無理に起こせば魂が壊れてしまうかも

モーティスお姉さま

オブリビオニス大丈夫。月の光が起こしてくれますわ

オブリビオニス影に飲み込まれた月は息を吹き返し、 憐れな人形は再び仮初の命を宿す……

ドロリス……!

オブリビオニスさあ始めましょう。今宵のマスカレードを!

終演後

記者今回も圧巻の演奏でした! 次の武道館公演に向け、意気込みを聞かせていただけますか?

祥子わたくしたちの使命は、ゲストの皆様に夢を見ていただくこと

祥子次の武道館でもAve Mujicaの世界に迷い込んで いただけましたら至上の喜びでございます

初華武道館ってすごいよね

海鈴デビューから間もないですからね

にゃむ『史上最速』って強調しておいて〜

記者は、はい。モーティスさんはいかがですか?

睦! ……私は…… …………

祥子ご覧の通り、モーティスは少々人見知りでして。 モーティス、本日のお礼を

睦……ありがとうございました

記者お時間ありがとうございました。 ではこれで失礼します

祥子良い夜を

にゃむふぅ……やっと外せるわ〜

祥子楽屋に戻るまでは外さないで。 誰が見ているかわかりませんから

にゃむえ〜、すっぱ抜かれちゃう? アモーリスの正体は、配信者のにゃむち——

祥子アモーリス

にゃむ……アタシ達ってさあ、これからもずっと仮面でいくの? 顔と数字が台無しなんだけど

祥子……

にゃむsumimiの初華。 お笑いの大御所若葉と、演技派女優森みなみの娘

にゃむ仮面を外すだけで世間の注目、ぜ〜んぶ取れるのに

祥子Ave Mujicaは安売りをいたしません。 まずは実績を重ね、音楽性の評価を——

にゃむ『昨日好きでも、今日飽きた』

祥子!

にゃむ世の中って残酷だから、ちんたらしてたら 飽きられちゃうかもよ〜?

睦……

祥子わたくしは、このバンドをいっときの 流行で終わらせるつもりはございません

祥子言ったでしょう? 残りの人生、わたくしにくださいと

初華さきちゃん……

にゃむ……ふーん

祥子カードの切りどころは心得ております。 仮面を外すのは最高の舞台、最高のタイミングで

初華さきちゃん、待って。一緒に帰ろう

祥子初華

初華さっき感動しちゃった。 Ave Mujicaのこと、すごく大切にしてくれてるんだーって

祥子それはそうですわ。皆さんの人生を預かるのですから

初華デビューしたばかりでこんなに人気になるなんて やっぱりさきちゃんはすごい

祥子初華のおかげですわ

祥子Ave Mujicaのフロントとしてこれ以上は無いと思っています

祥子よろしかったんですの? ……あの時、なにも聞かずにわたくしの誘いに乗って

初華うん

祥子初華は絶対、水晶とか買わされるタイプの人間ですわ

初華あ、ひどいな〜

祥子同じ事務所とはいえ、sumimiと並行しての活動は大変 ですわよね。なるべく負担にならないように——

初華負担じゃないよ、全然。 むしろ気分転換になってるし……ううん

初華さきちゃんと、ずっと一緒にいたいって夢が 叶ったから……

祥子……初華

祥子失礼…… ……!

初華仕事?

祥子……ええ。ではこれで

祥子ほら、しっかり!  警察にご厄介になるのこれで何度目ですの?

清告うう……俺なんていない方がいいんだ……

祥子訳わからないこと言ってないで……! ちゃんと布団で寝てください

祥子……ふぅ

祥子……

祥子(武道館までに4曲。初華の作詞の時間を考えると 最低でもこの週末に2曲……)

祥子(……わたくしにはもう——この道しかないのだから)

祥子思い返せば、わたくしは本当に幸せな子どもでしたわ

祥子優しい両親に囲まれ、大好きなピアノを弾く毎日…… 何の心配もなかったあの頃は、 本当にキラキラと輝いていた……

祥子けれどそんな日々は、 お母様が亡くなったことで終わりを告げましたわ

祥子お父様はわたくしを守ると、がんばってくださいましたが…… どうしても深い悲しみから立ち直れずにいた……

祥子けれど、そんなわたくしを救ったのは——

教師午後から音楽祭です。講堂に移動しましょう——

睦祥、移動

祥子……ええ

祥子…… !

祥子睦、今の方々は?

睦月ノ森で初めてバンドを組んだ、高等部の先輩

祥子バンド…… 睦、わたくし達もバンドをいたしましょう

睦え

祥子バンド、ですわ!

祥子長崎そよさん、素敵な方でよかったですわ。 あとはボーカル……

燈……

祥子? ……あの方、あんなに橋から乗り出して何を……?

燈……あっ

祥子!!

祥子ダメですわ!!

燈う………

祥子いたた……大丈夫ですの?

祥子突き飛ばしたのはごめんなさい…… でも、死ぬのはダメですわ!

燈え……?

祥子あなた、死のうとしたでしょう!?

燈ううん…… 持ってた花が風に飛ばされて……手を伸ばしただけ……

祥子花……?

祥子花と命、どっちが大事ですの!?

祥子あ、いえ…… 花にも命がありますわね……

燈落ちてた花だから死んでたと思う

祥子死!? え!?

燈……

祥子……わたくしの勘違いでしたの。 そういうつもりではなかったんですのね……

祥子彼女は立ち去ろうとするわたくしを引き留め、 怪我の手当てをと、ご自宅に誘ってくださいました

祥子彼女の自室から歌詞ノートを見つけた時は、 本当に胸が高鳴りましたわ

祥子……この時の出会いは、今でも運命だったと わたくしは思っています

祥子——♪

燈……

祥子『人間になりたいうた』……本当に素敵な歌詞ですわね……!

祥子申し遅れました。 わたくし、豊川祥子と申します

祥子あなた、お名前は?

燈……燈……

祥子燈さん……わたくしとバンドを組んでくださらない?

祥子これからわたくしたちは、バンド…… 共に音楽を奏でる運命共同体となるのです

睦……

祥子それからは本当に毎日が楽しかった。 初めてスタジオで練習したり、カラオケに行ったり……

祥子歩道橋の上から、思いの丈を叫ぶなんてことも しましたわ

祥子ワクワクするような日々のすべてが、 あの歌につながっていきました

燈これ……

祥子これは……?

燈初めて、歌詞書いた

祥子……わかりますわ。これは……

祥子……っ……

燈、立希、そよ、睦!

そよ大丈夫? 祥ちゃん

祥子『春日影』は……わたくしたちの歌ですのね

祥子燈の歌詞にふさわしい曲を書いてみせますわ

CRYCHICはぁ……はぁ……

燈ありがとう、ございました……

祥子(初華……観にきてくれたんですのね……!)

祥子(……? お父様は?)

立希は? 何この感想!? 燈の歌のことなんもわかってない!

立希ブロックしてやる

そよ立希ちゃん、ブロックよりミュートね

祥子(……お父様、どうしたのかしら?)

豊川清告

祥子お父様いらしてます?

豊川清告もう一緒には暮らせない

豊川清告祥子は幸せになってくれ

祥子え……?

睦……?

祥子おじいさま、お父様はどこ! 知っているのでしょう?

定治アレはもう豊川の人間ではない。 詐欺にあった責任をとって辞めた

祥子詐欺……?

定治168億の損失だ

祥子! そんな……

定治運が悪かった。父のことは忘れて、私の娘になりなさい。 瑞穂の忘れ形見だ。苦労させたくない。

祥子……!

定治祥子! お前のような箱入りが、どう生きていくつもりだ!

祥子飛び出して来てしまいましたが…… 形見のお人形だけは持ってこられてよかったですわ

祥子こちらが……お父様の新しいお住まい……?

祥子! お酒の空き缶……

清告……うぅ……

祥子お父様! お父様しっかり!

清告んん……

祥子……息、してますわね。よかった……

祥子それからは、とにかく必死でしたわ。 生活費を稼がねば、お父様の代わりに わたくしがなんとかしなければ、と……

祥子無理を言っていることはわかってます。 けれど、そこをどうか雇っていただけないでしょうか?

店長『そう言われてもねえ、やっぱり中学生はダメよお。 親御さんは? どうしてるの?』

祥子……それは

店長『申し訳ないけど、うちでは無理よ。ごめんなさい』

祥子はい……失礼します

祥子残高もあとわずか…… 新聞配達を増やしても……雀の涙ですわ。これでは

睦本当に辞めちゃうの?

祥子睦はご存じ? 月ノ森の学費って、すごく高いんですのよ

睦……CRYCHICは?

祥子……

祥子なんとか時間を作りますから、まだ誰にも言わないで

祥子メンバーには……迷惑も、心配もかけたくない。 絶対にCRYCHICだけは辞めたくない……!

祥子わたくしがなんとかしなくては。 わたくしが、わたくしが——!

祥子思ったより早く上がれましたわ。 まだ練習に間に合いますわね

そよ今日は来れそう?

そよ今日は来れそう?

そよ

そよ

3303-6761-0110

祥子? 一体どなた……?

祥子……はい豊川です。 ……え?

祥子どうしてお酒なんか……!

清告祥子……お父さん、がんばるから……

祥子お父様………

そよ

そよみんな待ってるよ

そよどうしたの?

そよなにかあったら相談にのるから

祥子……

祥子(もう…………これ以上……)

祥子今日は言うことがあって来ましたの

祥子CRYCHICを、辞めさせていただきますわ

立希……!

そよ、燈え

立希てか、無責任じゃない?

燈でも、祥ちゃんがいないと——

祥子甘ったれたことを言わないでちょうだい! 燈は特に練習しないといけないのに、 今まで何をやっていたんですの?

そよ待って……! ちゃんと話し合おうよ、ね? せっかく楽しくやってきたんだから…… 睦ちゃんもそう思うよね?

睦…………

睦私は……バンド、楽しいって思ったこと一度もない

祥子ただ……胸が張り裂けそうだった

祥子本当のことを言えたら、どんなによかったか。 CRYCHICを続けたいと言えたら、どんなによかったか

祥子みんなを傷つけた。 だから……この胸の痛みは、わたくしへの罰なのですわ

祥子わぁああああああ……

祥子(わたくしにはもう、Ave Mujicaしかない)

祥子(……だからこそ武道館は成功させなければ。 もう後戻りなど、できないのだから)

祥子(………早く、すべて忘れてしまいたい——)