それから、私たちの騒がしい日々は続いて
——忘れられない、夜にしようぜ!
Details 14:41
- Chapter
- 花飾りのためのデコール
- Duration
- 14:41
- Release
- Dec 31, 2025
- Characters
- 汐見 蛍 , 伊沢 なつめ , 琴平 凪 , 浜崎 まほろ , and 和泉 朋花
Text 159
Background
夏がきて
Background
奏多
絶対こっちのフレーズのがいいって!
ライブでも盛り上がる!
ライブでも盛り上がる!
なつめ
盛り上がりなんてどうでもいい。
あたしは曲の芸術性を重視してるの
あたしは曲の芸術性を重視してるの
奏多
あーもう、なんでわっかんねーかな〜……!
なつめ
それはこっちのセリフ。
ちょうどいいわ、あれで決着つけるわよ
ちょうどいいわ、あれで決着つけるわよ
奏多
お、いいね〜〜。そこだけは気が合うな
奏多
なつめ、わたしとセッションしようぜ!
朋花
あの〜……お二人、セッション始めちゃいましたけど……
放っておいていいんですか?
放っておいていいんですか?
凪
あー、うん。大丈夫。
ああなったら一応着地はするし
ああなったら一応着地はするし
まほろ
そうそう、もう慣れちゃったよね〜。
これが私たち流って言うか
これが私たち流って言うか
奏多
っしゃ! 大勝利!! 奏多サマ無敵〜〜!!
なつめ
負けてない! まだ負けてないわよ!
奏多
ほ〜ん。
なら『もう一回セッションお願いします』じゃね??
なら『もう一回セッションお願いします』じゃね??
朋花
…………
凪
あー……
奏多のファンだって言ってたけど……幻滅した?
奏多のファンだって言ってたけど……幻滅した?
朋花
いえ……
朋花
血の気の多い奏多さんも、とーっても素敵だと思います♡
まほろ and 凪
……あはは
……あは
……あは
Background
秋が来て、冬が来て
Background
奏多
…………
なつめ
どうすんのよ……もう朝どころか昼なんだけど!?
なつめ
練習合宿するって言ったの誰よ!
結局夜通し喋ってゲームして終わっちゃったじゃない!
結局夜通し喋ってゲームして終わっちゃったじゃない!
凪
や……なつめ先輩もがっつり楽しんでたじゃないですか……
なつめ
うっ……
朋花
まほろさん、起きてください
まほろ
う〜〜〜ん……おかわり……
朋花
まあ、なんてベタな
なつめ
まほろっ! いつまで寝てんのよ!
まほろ
へぇあ!?
凪
あは。やっぱ寝起き悪いね
奏多
……ふふ。あははっ
朋花
? どうしたんです、奏多さん
奏多
いや……なんかバカみてえに幸せだなって。
おかげで、いいのが思いついた
おかげで、いいのが思いついた
なつめ
何を? あっ! 新曲のフレーズ!?
奏多
いや、バンド名
朋花
バンド名……?
『アクアラピッズ』じゃなくてですか?
『アクアラピッズ』じゃなくてですか?
奏多
今のは、仮で付けてたやつだからさ。
ちゃんとしたのほしいなーって、ずっと考えてたんだよ
ちゃんとしたのほしいなーって、ずっと考えてたんだよ
奏多
で……今、いいの思いついた
まほろ
ん……ごめん……今何の話してる……?
凪
奏多が正式なバンド名思いついたって
奏多
そ、すんげーいい名前
奏多
millsage
凪
……で、そのちゃんとした名前はどういう意味?
奏多
おう、これはな――
Background
笑って、はしゃいで、たくさんライブして。
特別だけど、なんでもない日々を過ごしてた
特別だけど、なんでもない日々を過ごしてた
季節はめぐって。気づいたら私たちは高校生になって。
結成から一年とちょっとが経ってた
結成から一年とちょっとが経ってた
Background
まほろ
汐見蛍ちゃん?
奏多
そ。最近知り合ったんだけどさー、
めっちゃくちゃピアノ上手いやつでさ
めっちゃくちゃピアノ上手いやつでさ
朋花
奏多さんがそこまで褒めるだなんて、
よっぽどすごい方なんでしょうね
よっぽどすごい方なんでしょうね
朋花
ぜひ一度お会いしてみたいものです……
あっ、でももちろん一番は奏多さんですよ♡
あっ、でももちろん一番は奏多さんですよ♡
奏多
やー……どうだろな。
もしかしたらあいつ、わたしより上手いかも
もしかしたらあいつ、わたしより上手いかも
凪
……かも?
奏多
うん。なんでかは知んねーけど、
いっつもどっか遠慮して弾いてんだよな
いっつもどっか遠慮して弾いてんだよな
奏多
苦しそう……っていうか
奏多
本気でやったらぜってーすげーのに
なつめ
どうだか。案外それが本当の実力だったりするんじゃない?
奏多
いーや、わたしにはわかるね。
蛍はマジですごい音楽をやるヤツだ
蛍はマジですごい音楽をやるヤツだ
奏多
なんてったって、わたしの弟子だかんな
Background
そして、去年の9月
Background
水瀬女子学園 文化祭ステージ
まほろ
ごめーん!
着替えるの手間取っちゃって……
着替えるの手間取っちゃって……
奏多
おっせーぞまほろ!
ほら見ろ、体育館パンパン
ほら見ろ、体育館パンパン
まほろ
! わぁ……こ、これ!
全校生徒いるんじゃない!?
全校生徒いるんじゃない!?
なつめ
はんっ、ようやくあたしらの実力が知れ渡って来たみたいね
凪
文化祭ステージの大トリとか……なんとまあ
まほろ
去年と大違いだね。
中等部の時の文化祭は、ホントヤバかった
中等部の時の文化祭は、ホントヤバかった
凪
お客さん数えられるくらいだったもんね
なつめ
13人よ
奏多
はは、なつめしつけ〜。
デリケートなわたしも、あん時はおおいに傷ついたねェ……
デリケートなわたしも、あん時はおおいに傷ついたねェ……
奏多
でも! そっからのこの満員!
そんでこの衣装バッチリ状態はアツいだろって!
そんでこの衣装バッチリ状態はアツいだろって!
まほろ
だねっ!
朋花
ふふ。まほろさんの衣装もサイズは大丈夫そうですね
まほろ
うん……! すごいねこれ、かっこいい!
なんか……バンドって感じ!
なんか……バンドって感じ!
凪
あは。今までもバンドでしょ?
まほろ
そ、そうなんだけど! そうじゃなくって!
まほろ
えーっと、何て言うか……そう!
まほろ
私いま! 人生始まりそうな気がする!
奏多
……!
奏多
ははっ、いいじゃん。
こっからステージ降りるまでの間は、わたしたち5人が主人公だ
こっからステージ降りるまでの間は、わたしたち5人が主人公だ
Illustration
奏多
ベイビーばりのでけえ声、上げてこうぜ
奏多
――わたしたちはここにいる、ってさ!
まほろ
……うんっ!
Background
奏多
よーお前ら! 来てくれてサンキューな!
文化祭楽しんでるか? 楽しんでるに決まってるよな!
文化祭楽しんでるか? 楽しんでるに決まってるよな!
奏多
わたしの最高のバンドメンバー、紹介させてくれよ!
奏多
ギター、伊沢なつめ!
奏多
もひとりギター、琴平凪!
奏多
ベース、浜崎まほろ!
奏多
ドラム、和泉朋花!
奏多
そんで最後は!
キーボードボーカル、沢海奏多!
キーボードボーカル、沢海奏多!
奏多
そんな5人で、millsage!
そろそろ音楽始めてこうか!
そろそろ音楽始めてこうか!
奏多
――忘れられない、夜にしようぜ!
それが、5人でライブした最後の日
それから、たった数週間後
ある晴れた秋の日に
奏多は、静かに、息を引き取ったの
Background
まほろ
…………
なつめ
なんで……なんでよ……っ!
なつめ
あたしたち、これから……っ!
これからだったじゃない……!
これからだったじゃない……!
なつめ
責任……取りなさいよ……っ!!
朋花
…………
朋花
そうですよ
朋花
私、怒ってます。
あんなに夢中にさせておいて、いなくなってしまうなんて
あんなに夢中にさせておいて、いなくなってしまうなんて
朋花
あんまりじゃないですか
朋花
でも、でも
朋花
やっぱり……悲しいです
凪
……ねえ、奏多
凪
何で余命のこと、黙ってたのさ
凪
バンド組んだ時からとか……そんなの……っ!
凪
そんなのもっと……上手くやれたはずじゃんか……!
凪
バカだよ、ほんと……っ!
まほろ
……どうしよう
まほろ
……私
まほろ
どうしたら……っ
Background
まほろ
それが、半年前のこと
まほろ
……それから、みんなで話し合ったんだ。
millsageをどうするかって
millsageをどうするかって
まほろ
奏多がいないと、millsageの音楽には
ならないってことも、わかってたけど
ならないってことも、わかってたけど
まほろ
それでも……バンドは続けたいって、
私がみんなにお願いしたんだ
私がみんなにお願いしたんだ
蛍
……そうだったん、ですね
蛍
……まだ、いろんな気持ちがぐるぐるしてます
蛍
でも、今日ここに来なかったら、わたし……
本当のことを、ずっと知らないままだったから
本当のことを、ずっと知らないままだったから
蛍
だから……話してくださって、
ありがとうございます
ありがとうございます
まほろ
……ううん。こっちこそ、
来てくれてありがとう
来てくれてありがとう
まほろ
——終わっちゃう前に、伝えられてよかった
蛍
……え?
まほろ
…………
凪
millsage。解散するって決めたんだ
蛍
え……!?
凪
奏多のお葬式が終わってから、
なつめ先輩……リードギターの人が来なくなってさ
なつめ先輩……リードギターの人が来なくなってさ
凪
『奏多がいないならやる意味ない』『弾きたくない』……って
朋花
私たちのことも、避けるようになってしまって
まほろ
……すごく辛いんだと思う。
私も……私たちも、そうだから
私も……私たちも、そうだから
まほろ
無理に付き合わせるなんて、できないよね
蛍
…………
凪
それでひとまず、3人でも
やれることをやろうってなったんだけど……
やれることをやろうってなったんだけど……
朋花
やはり、5人でやっていた音楽を
3人でやるのは、物理的に難しく
3人でやるのは、物理的に難しく
朋花
特に、まほろさんの負担がかなり大きくなってしまって
まほろ
…………
朋花
このまま続けていくのが本当に正しいのか、
3人で話し合ったんです
3人で話し合ったんです
凪
バンドは……残せるなら、残したいよ
凪
でもそのために、まほろが無理をすることに
なるなら……それは違うと思うから
なるなら……それは違うと思うから
朋花
そうですね。それにお客さんからの評価も、
5人の頃のものからは随分変わってしまっています
5人の頃のものからは随分変わってしまっています
朋花
思い出を綺麗なままにしておくのも、
大事なことだと思うんです
大事なことだと思うんです
蛍
だから……解散……
まほろ
うん……そうだよ
蛍
そんな……
蛍
奏多さんは、millsageが宝物だって……!
凪, 朋花, and まほろ
…………
蛍
……っ
蛍
(ダメだ)
蛍
(わたしなんかが、口を挟んでいいことじゃない)
蛍
(このバンドのことも、皆さんのことも、
何も知らないのに)
何も知らないのに)
蛍
ごめんなさい……わたし、余計なこと……
まほろ
ううん。ありがとね、蛍ちゃん
まほろ
最後のライブ、よかったら観に来て欲しいな
まほろ
あ、まだ全然日にちは決まってないんだけどね
蛍
……はい
まほろ
蛍ちゃん、奏多のために……泣いてくれてありがとう
蛍
(……でも)
蛍
(本当に……これでいいのかな……)