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なにもなくても
私だって、主人公なんだって思いたいよ!!
Details
18:15
Chapter
花飾りのためのデコール
Duration
18:15
Release
Dec 31, 2025
Characters
汐見 蛍
,
伊沢 なつめ
,
琴平 凪
,
浜崎 まほろ
, and
和泉 朋花
Text
194
Background
翌日
Background
駅前
朋花
……蛍さん
朋花
(最寄り駅までくればもしかして、と思いましたが)
朋花
(さすがに、出てきてはもらえませんか)
朋花
(昨夜送った連絡も反応なし)
朋花
(これは……嫌われてしまいました、かねえ)
朋花
はぁ……これで終わりですかね
朋花
(また私は、死に損なった)
Background
クラスメイトA
朋花ちゃんすごーい!
クラスメイトB
さすが朋花ちゃん!
教師
和泉さんに任せれば安心ね!
ほうか
えへへ、そんなことないです。
みんなのおかげですよ
Background
――かつての私は、驕り高ぶっていました
ただそれなりに器用で、人付き合いが上手だっただけ
それだけで偶然、運よく人の輪の中心にいられた私は、
次第に疑問を抱き始めました
『私の何が評価されているのか?』と
飛び抜けた才能を持っているわけでも、
血の滲むような努力をしたわけでもない
そんな私が、なぜ『人
の輪
こ
の中
こ
心』に?
……それから同級生に誘われ、バンド活動をするように
なりましたが、疑問は日に日に大きくなっていきました
Background
観客A
あのボーカルの子、上手〜!
観客B
和泉さん! 私、ファンになっちゃいました!
Background
世界中に、嘘をつかれているような
私は確かにここにいるのに、誰も私を見ていないような
そんな時、彼女に出会いました
Background
奏多
どーもはじめまして! えーっと、何だっけ?
あ、そうだバンド名だバンド名!
奏多
あー、ウィー・アー……アクアラピッズ!
奏多
――♪
朋花
……っ♡
本物だ、と。そう確信しました
彼女のそばにいれば、私はモブでいられる
みんなが作り上げた私を、その光で灼き殺せる……!
Background
そのはず、だったのに
Background
朋花
(やっぱり私は一生……
叶えられることのないまま終わる)
???
……見つけた
朋花
! ……あら
朋花
なつめさんじゃないですか♪
なつめ
……昨日あんなことがあったっていうのに。
よくもまあそんなフツーでいられるわね
朋花
心外ですね。
蛍さんに謝りたくて、こうして待ち伏せているじゃないですか
なつめ
ほんっと、何考えてるかわかんないわねあんたは……
まあいいわ
なつめ
一個だけ、質問に答えなさい
朋花
?
なつめ
あんた、millsageをやる気はあるの?
朋花
……ええ、もちろん
なつめ
そ。じゃ、早速行くわよ
朋花
? どこに?
なつめ
迎えにいくのよ。蛍を
朋花
……え、っと
なつめ
はん、あんたもそんな顔すんのね!
珍しいものが見れたわ
なつめ
確かにあんたはメチャクチャなことをしでかしてくれたわ。
メンバーからは嫌われたってしょうがないレベルのね
なつめ
でもね、あたしはそんなのどうだっていい。
あたしが守んなきゃいけないのは、奏多と作った音楽だけ
なつめ
それが消えてなくならない限りは、
どうぞ喧嘩でも騙し合いでもやっててちょうだいって感じ
朋花
(承認欲求だけで生きている人だと思っていましたが……)
朋花
(どうやら、案外肝が据わっているようですね)
朋花
……? さっき蛍さんを、とおっしゃいましたが……
朋花
まほろさんと凪さんのことは、
迎えに行かなくていいんですか?
なつめ
え? ああ
なつめ
そっちならもうとっくに、迎えに行かせたわよ
Background
凪
…………
まほろ
……凪ちゃん
凪
! まほろ……!
まほろ
……もしかして、ずっと待ってたの?
凪
……うん。
家押しかけるのは、なんか違うかなって
まほろ
メッセージ、ずっと無視したのに?
凪
……でも、いつかは読むでしょ
まほろ
……何それ
凪
……まほろ、ごめん
凪
私……まほろを、傷つけた
凪
……最低だよね、私
まほろ
……ほんとだよ
凪
……っ
まほろ
でも……私も最低
凪
え……
まほろ
朋花ちゃんのことはね、そんなに怒ってないんだ
まほろ
そりゃまあ、びっくりはしたけどさ……
私が頼りないって思われてたのは、それはそうだよねって感じ
凪
……そんなこと……っ
凪
……
まほろ
ボーカルも、ベースも、歌詞も……
私だってやれる。やれるはずだ、って
まほろ
やらなきゃいけないことなんだって勝手に思い込んで、
凪ちゃんの言うこと無視して、無茶して、空回りして
まほろ
その結果、ライブで勝手に自滅……
まほろ
なんかもう、ダサすぎるよね
凪
……や、まほろはがんばってたでしょ
まほろ
……そうじゃない
凪
みんなを繋ぎとめようとしてたし、
ボーカルも、歌詞だって諦めずに――
まほろ
だから! そうじゃないんだって!
凪
……っ!?
まほろ
わかってるよ……私には才能とかカリスマとか、
そういうのはないって! でも……!
凪
……まほろ――
Background
まほろ
あーーーーーーっ!!!
くやしーーーーーー!!!
Background
凪
!?
まほろ
蛍ちゃんにボロ負けした!
向こうは中学生で、私高校生なのに!!
まほろ
みーーーんな私より蛍ちゃんを選んでた!!
まほろ
負けたのも悔しいし、
認めてもらえてなかったのも悔しいけど!
まほろ
昨日……蛍ちゃんの歌を聴いて、もういいんだって!
なんか楽になっちゃった私がいて!
まほろ
負けを認めちゃったのが、何より悔しい!!
凪
……まほろ
まほろ
あーもう! 何で私には才能ないの!
まほろ
憧れたっていいじゃん! 夢見たっていいじゃん!
私だって、主人公なんだって思いたいよ!!
まほろ
キラキラして、みんなを惹きつけて離さない……
そういうものに……! 私だって……!
まほろ
私だって…………奏多みたいに……
凪
……奏多は、特別だよ。無敵のヒーローだったもん
まほろ
…………
まほろ
じゃあ、なんで……?
まほろ
無敵だったのに、誰よりも主人公だったのに。
なんで死ななきゃいけなかったの……
まほろ
ねえなんで!?
なんで奏多は死ななきゃいけなかったの!?
凪
…………わかんない……
凪
わかんないよ……! そんなこと
まほろ
なんで私たちを置いてったの……!!
なんでなの! ねえ!!
凪
わかんないってば!!
まほろ
……っ
Background
凪
私だって、ぜんぶ夢だったらいいのにって……
何度も思った……!
Background
凪
『ぜんぶ嘘だよ』って、
その辺からひょっこり奏多が出てきてくれたらって……
Background
凪
何度も、何度も……!
まほろ
何で……何でなの。
もっともっと、続きがあったはずなのに
まほろ
まだ高2と高3の文化祭が残ってるし、
修学旅行だって!
まほろ
進路決めて受験して!
みんなでおんなじ大学行ってバンドして!
まほろ
そんな未来が、あったはずなのに……っ!
凪
……そうだね
凪
本当に、そう
Illustration
まほろ
なんなのもう……!
全部ぜんぶ、悔しくて、ムカついて……!
まほろ
会いたいよ、奏多……っ
まほろ
バカだなって……笑ってよ……っ!
まほろ
ううぅ……うっ
まほろ
うわああああああ……っ!
まほろ
ぐすっ……ひっく……
まほろ
凪ちゃん、ティッシュ
凪
……もうない
まほろ
……なんだよ、もう
まほろ
ぐすっ……あ〜〜。
こんな泣いたの久しぶり
凪
……確かに。大騒ぎしてるまほろ、久しぶりかも
まほろ
え、大騒ぎってひどくない……?
凪
いやだってさ。子どもの頃は、奏多とまほろで
よく言い合いして、2人して泣いたりしてたじゃん
凪
けどバンド始めてからはさ、なんか揉めても
それなりに大人っていうか
まほろ
そりゃ……いつまでも子どもじゃないんだし
凪
うん……だから
凪
本音って、言えなくなるんだなぁって
凪
なつめ先輩も、朋花も。
ずっと一緒にいたけど、本音で話したことってないのかもね
まほろ
……そうかも
凪
……まほろさ。奏多が亡くなってから、
今まで泣いてなかったよね
凪
お葬式の時も
まほろ
……!
凪
抱えてるものがあるんなら、教えて欲しい
凪
もうまほろ一人に、背負わせたくない
まほろ
…………
まほろ
私ね。奏多の夢を、邪魔しちゃったんだ
Background
まほろ
彗星ライジング。10代限定の、バンドの甲子園
まほろ
それに出ようって、後夜祭の時に言われて
まほろ
でも私……そういう未来のこととか、考えたことなくってさ
まほろ
今が楽しすぎて……変わっちゃうのが怖くて。
今じゃなくて、もっと先にしようよって、言っちゃったんだ
Background
まほろ
時間がないこと、誰よりも知ってる奏多に向かって
凪
……
まほろ
私があんなこと言わなかったら、
奏多が死んじゃう前に、出れてたりしたのかなって
まほろ
そうじゃなくても、私が出ようって
あの時ちゃんと返事できてたら
まほろ
そしたら奏多の気持ちも、少しは……
まほろ
そう思ったら……私がそれを、叶えなきゃって
凪
……だから、あんなに無茶してたの?
まほろ
うん……でも、やっぱり私に奏多は
無理だったみたい
まほろ
昨日のライブで、嫌ってくらい思い知ったよ
凪
…………
まほろ
酷いやつだよね、私。
自分の罪悪感のために、みんなを巻き込んでさ
凪
……どうだろ
凪
奏多がどう思ってたかは……奏多にしかわかんないし
まほろ
……だよね
まほろ
あーあ……私、これからどうしよ
まほろ
才能ないって突きつけられて、
罪滅ぼしも、うまくできなくって
まほろ
…………なにができるんだろう
凪
……
凪
……別にさ。バンド、やめたっていいんじゃない?
まほろ
……え?
凪
前にも言ったけど。
辛い思いをしてるまほろは、見たくないよ。
……そういう道、選んでもいいと思う
まほろ
…………そっか
まほろ
……そうだよね……
凪
うん……一度はそうしようって話になったんだし。
……奏多への、気持ちもさ
Background
凪
……大人たちに言われたじゃん。お葬式で。
『時間が解決してくれる』って
凪
……『悲しみも、時間が癒してくれる』って……
Background
まほろ and 凪
…………
まほろ
……やだ
まほろ
あ〜もう、何度も何度もこの気持ちになっちゃうな……
でも、嫌なんだもん
まほろ
……やっぱり終わらせたくないよ、
奏多への想いも……私の物語も
まほろ
奏多の代わりもできない、蛍ちゃんみたいな才能もない。
主人公になんか選ばれっこない
まほろ
なんにもない。空っぽ人間
まほろ
わかったよ。痛いほどわかった。
けどさ、ここで降りたら終わりじゃん
まほろ
痛くても、降りたらダメなの
まほろ
自分に何もないのを、終わらせる理由にしたくない……!
凪
……あは。ほんと頑固
凪
じゃあ、それでいいよ
まほろ
……え
凪
それでいい、って言ったの。
向き合って……生きてくしかないんだよ
まほろ
……凪ちゃん
凪
いや、わかんないけどね?
凪
だってバンドも今こんな感じだしさ
もう一度やれるかなんて全然わかんないじゃん
まほろ
……だね
凪
……さむ
まほろ
海風、冷たすぎ
凪
ね。沁みる
まほろ
…………行こっか