神様からの贈り物

私は……誰かに自慢できる特技も、まして才能なんて 全然ないからさ〜

詳情 14:21
章
花飾りのためのデコール
時長
14:21
發布
2025年12月31日
角色
汐見 蛍 、 伊沢 なつめ 、 琴平 凪 、 浜崎 まほろ 和 和泉 朋花

文字 169

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翌日

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ガレージ

蛍
…………
凪
なつめ先輩、チューナー貸してください
なつめ
……あんた、クリップのやつ持ってたでしょ
凪
忘れちゃって
なつめ
は? ギタリストがそれってどうなの?
なつめ
ていうか、あたしのチューナーペダルだから無理。
ボードに繋いじゃってるし
凪
えー、じゃあまほろに借ります。まほろー
まほろ
わ、私も使ってるからちょっと待って!
蛍
(うう……これから初練習……
心臓がばくばく言ってる……!)
朋花
緊張されていますか?
蛍
ひゃっ!? ほ、朋花さん……!
朋花
ふふ、ただの練習です。
そんなに構えなくても大丈夫ですよ
蛍
そ、そそそ、そうですよね……!
蛍
(一応、練習する曲は全部覚えてきたけど……)
蛍
(クラシックの伴奏とは全然違ってて……
緊張しない方が難しいよ……!)
蛍
わたし、立つ場所ここでいいんですかね……?
お邪魔じゃないですか……?
まほろ
そこで大丈夫!
蛍ちゃん、リラックスリラックス!
まほろ
私たちもリハビリみたいなところあるし。
少しずつ慣れていけばいいからね!
まほろ
練習がんばったら、おやつタイムもあるよ!
蛍ちゃんは好きなお菓子ある?
蛍
え? えっと……たまごボーロが好きです
まほろ
た、たまごボーロ!? あったかな〜……?
朋花
……という感じなので、気楽に行きましょう
蛍
は、はいっ! 気楽に!
なつめ
凪、チューニング終わった?
凪
完璧でーす
なつめ
……蛍も。準備いいわね?
蛍
あ……がんばります! よろしく、お願いします!

30分後

朋花、凪、なつめ和まほろ
……
蛍
う……す、すみません……!
凪
あは、ガッチガチだね。
この前とは大違い
まほろ
ん〜、あはは……
なつめちゃんとバチバチ勝負してた人とは思えないね
朋花
テクニック的には問題ないのに……
なぜか全然噛み合いませんね
蛍
つ、次はもっとみなさんの音を聴いてみます……!
蛍
(ちゃ、ちゃんとやらなきゃ! サポートとして
もっとサポートしないと!)
蛍
(それに、ちょっとの油断もダメ。
子どもの時みたいに、虹色が見えるなんてこと……)
蛍
……!
なつめ
だから言ったじゃない。練習でこの感じなんだし、
まだライブは厳しいんじゃないの?
蛍
!
蛍
(このままじゃ、わたしのせいでライブが……!)
蛍
(まほろさんは、出たいって言ってたのに!)
蛍
もう一回! ……もう一回、やらせてもらえませんか!
凪
やってもいいけどさ……どうする、まほろ?
まほろ
うーん……
まほろ
よし、休憩!
蛍
えっ!?
まほろ
蛍ちゃん、私とお散歩行こう!
蛍
ええっ?
背景
背景

海沿いの道

まほろ
う〜ん、いい風。
人工の浜だけどさ、ここはけっこう綺麗だよね
蛍
あ、はい……
蛍
あの……よかったんですか?
練習中断しちゃって……
まほろ
いいのいいの。
たまごボーロも調達しなきゃだったし!
蛍
でも……
蛍
(わたしのために貴重な時間を……)
まほろ
…………
まほろ
蛍ちゃんは、奏多と一緒に弾いてたんだよね?
蛍
え……? はい
まほろ
どうだった? 楽しかった?
蛍
え……っと。楽しい……は、どうでしょう
蛍
奏多さんみたいな音楽をやりたいのに、
自分はまだまだだなって、思うことが多くて
まほろ
奏多みたいな音楽って、どんなの?
蛍
……みんなを幸せにできる音楽です
蛍
奏多さんが演奏したあとは、お客さんみんなが笑ってて。
とっても幸せそうなんです
まほろ
へ〜……なるほどなるほど
まほろ
最初はただ、緊張してるのかなって思ってたんだけど。
ずっと息ができない、みたいな顔してたからさ
まほろ
蛍ちゃんはどこか苦しそうに弾いてる、って
前に奏多が言ってたのを思い出して
蛍
! ……苦しそう、でしたか?
まほろ
あー、まあ……そこはかとなく?
蛍
……すみません
まほろ
ううん、謝ることじゃないよ。
わかんないけど、事情があるんだろうなーって
蛍
…………
蛍
(わたしが、音楽にまっすぐ向き合えない理由)
蛍
(お母さんにも……誰にも話したことのない苦い記憶)
蛍
(奏多さんには、いつか話そうと思ってたけど……)
蛍
……虹色が、見えたんです。小さい頃
まほろ
……虹色
背景
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蛍
上手に弾けると、お母さんや先生が笑ってくれて……
そしたら、目の前がピカピカって
蛍
音が弾けて、
世界が、輝いてるみたいな
背景
背景
蛍
わたしはその景色が、大好きで
蛍
虹色が見えるといい演奏ができて……
金賞を何度ももらうことができました
蛍
でも……そのせいで
一緒にピアノを習ってた子たちを傷つけてしまったんです
背景
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蛍
……だから、もう二度と見ないように
まほろ
…………
蛍
わたしのピアノで、誰かが悲しんでしまったら
蛍
それがずっと、怖いんだと思います
まほろ
……そっか。話してくれてありがとね
まほろ
うん……そっか……そっか……
蛍
……?
まほろ
……だ、だめだ私! お姉さんぶって聞いてみたけど、
全然アドバイスできそうにない!
まほろ
ごめんね蛍ちゃ〜ん……!
蛍
そ、そんなこと!
聞いてもらえただけで!
まほろ
ありがとね……優しいね……
虹色……虹色かあ
まほろ
それ、アスリートの人がなるゾーンってヤツと
同じ感じっぽく聞こえるよね
蛍
自分でもちゃんとわかってなくて……
その、たまに見えるってことしか
まほろ
う〜ん……
本当にそれって、悪いものなのかな?
蛍
え……?
まほろ
あ、虹色が実際どんなものなのかは、
私にはわからないけど……
まほろ
そんなふうに綺麗に感じるものなら、
もったいないなあって
まほろ
私は……誰かに自慢できる特技も、まして才能なんて
全然ないからさ〜
まほろ
神様からの贈り物みたいで、ちょっと羨ましいかも?
蛍
…………
まほろ
それにさ! とんでもない演奏っていうことなら、
私たちは奏多で慣れっこだし!
まほろ
あ、良い意味でも悪い意味でもね
蛍
……ふふっ
まほろ
バンドだったら、案外気にならないかもしれないよ?
蛍
……バンド、だったら
まほろ
そうそう! メンバーがすごい演奏できるのなんて、
プラスでしかないもん!
蛍
……!
蛍
(考えたこともなかった)
蛍
(虹色が、誰かの役に立つかも……なんて)
蛍
(もし本当にそうなら……わたしは——)
まほろ
あ、凪ちゃんからだ。
そろそろお散歩終わりそう? ……だって
まほろ
あはは、ちょっと遠回りしすぎたかもね。
戻ろっか
蛍
……はいっ!
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1週間後

まほろ
――♪
蛍
……!
蛍
(ちょっとだけど、バンドの練習にも慣れてきた……!)
蛍
(コンクールとも、伴奏とも違う音楽の形)
蛍
(それぞれの音に、個性がある)
蛍
(朋花さんのドラム)
蛍
(綺麗なフォームで、リズムもずっと正確で……
それでいて時々、熱いものが見える)
蛍
(凪さんのギター)
蛍
(一歩後ろで構えてて、足りないところに
スッと入り込んでくれるみたいな)
蛍
(なつめさんのギター)
蛍
(格好良くて、いつも全力。
あたしを見ろ、って叫んでるみたい)
蛍
(まほろさんのベースと、歌)
蛍
(飾り付けのない、ありのままで、まっすぐな音楽)
蛍
(やっぱり両立はすごく大変そうだけど……
まほろさんはすごくがんばってる)
蛍
…………
蛍
(……あの時、奏多さんが言っていたこと)
蛍
(宝物だって言葉)
蛍
(ほんの少し、わかる気がする)
蛍
(一人じゃなくて、誰かと手を取り合って)
蛍
(おんなじところを、目指して奏でる)
蛍
(――いいなあ、こういうの)
蛍
……♪
背景 · 2
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朋花、凪、なつめ和まほろ
!!
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蛍
(あれ……今……っ!?)
蛍
(間違いない……この景色、虹色だ……!)
蛍
(もうずっと何年も見てなかったのに、
どうして今……!?)
背景
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なつめ
……蛍!
蛍
っ! は、はい
蛍
(どうしよう。また、あの時みたいに――)
なつめ
やればできるじゃない!
蛍
……え?
なつめ
最初からそれで弾きなさいよ!
やっとあんたらしくなってきたじゃない!
凪
先輩さ、もっと普通に褒めてあげましょうよ。
今の演奏良かったって
蛍
……あれ……?
蛍
今の……よかったん、ですか……?
朋花
はい、とっても素晴らしかったです♡
凪
めちゃよかったよ
朋花
それに、蛍さん。気づいてます? 
あなたさっき——
蛍
え?
朋花
……いえ、本当に最高でした。
ね、まほろさん?
まほろ
…………
凪
まほろ?
まほろ
……え、あ。うん!
まほろ
すっごくいい感じだったよ!
その調子でがんばろうね!
蛍
……! はいっ!
蛍
(よかった……!)
蛍
(やっぱり、まほろさんの言う通りなのかも!)
蛍
(バンドだったら、虹色でもきっと大丈夫なんだ!)
蛍
そっか…………いいんだ
なつめ
よし、今の感じ忘れないうちにもっかいやるわよ!
凪
もう1時間ぶっ通しなんだけど
朋花
スパルタですねえ
なつめ
うっさい1年ズ! いいから配置につく!
蛍も!
蛍
は、はいっ!
まほろ
…………
まほろ
やっぱり、蛍ちゃんはすごいや